長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-9月号」 職場不適応症について

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コラム「LOUNGE-9月号」 ―職場不適応症について―

(2011年9月6日掲載)
 抑うつ気分や不安、頭痛や嘔気、めまい、動悸などの体調不良を訴えて来られる人の中に、職場環境に起因する過度なストレスが明らかに誘因として認められる場合があります。20代から30代の人に多いのは過重労働によるストレス、30代後半から40代にかけては中間管理職としての上司との摩擦からくる心的疲労と自信喪失など対人関係によるストレスが原因となり、次第に職場に向かう気力が失せてきます。
 中心となる症状は、抑うつ気分や意欲の低下です。前日の夜は出勤の意志があり、比較的睡眠も良好なのに、朝になったら身体が重くて布団から出られないのです。ようやく家から出ても、出勤途中で嘔気が出現し、パニック様の不安や動悸に襲われ、途中で引き返します。会社に出ても早退したり、気づいたら1週間以上も休んでしまったということもあります。
 上司からの言動で自尊心が傷つけられたり、同僚の前で怒鳴られるなど耐えがたい思いを我慢している方も多く見受けられます。昇進がかかっており簡単に休めなないし、ノルマの軽減など申し出ることなど禁句であります。過重労働では、家に帰ったら寝るだけ、休みも形式的なもので、やり残した仕事を土日で片付けるなどは日常茶飯事というありさまです。成果主義が浸透し、以前のような職員同士の親密な付き合いが減り、業務以外の話をすることがないことへの孤立感をよく耳にします。コミュニケーションの機会が多ければよいというものではありませんが、職場の緊張がかなり強く持続しており、ライバル関係を意識して気が抜けないこともあるのでしょう。
 対処法としては、同僚に愚痴を言ったり、趣味やスポーツに取り組んだりすることはとても大切なことです。しかし、ほとんどの方が適切な解消法を持たれていないようです。治療としては、人間関係や適性の問題があるかどうかについて、面接を行いながら、心理検査などの手法を用いて詳細な理解を促します。症状面には薬物治療によるサポートをしながらひとまず休んでもらい、職場異動や業務内容、労働時間の調整などを検討します。それには、産業医や保健師、臨床心理士など企業の相談室の方、部署の上司、会社の人事担当者の協力が欠かせません。さらに職場復帰後もいかに再発を防ぐかについて、見守っていく姿勢が求められます。

―待合室で読める本から―

「マンガでわかる心理学」(ソフトバンククリエイティブ) ポーポー・ポロダクション
 心理学は、人の行動を観察し、行動の理由や原因を分析して心の働きを研究する学問です。つまり、自分のことをもっとよく知り、対人関係での問題を改善するきっかけを与えてくれます。本書では、この心理学の歴史からその種類、そして私たちの身の周りでどのように使われているかを、マンガを用いて解説しています。
「いつでも会える」(学習研究社) 菊田 まりこ 著
 大好きな飼い主を突然亡くした犬のシロの心の移ろいが淡々と描かれます。小さく無邪気なシロが大きな悲しみを懸命に乗り越えようとする姿が胸を打つ絵本。
「よくわかる色彩心理」(ナツメ社) 山脇 惠子 著
 色彩学と心理学の基本から、色が感覚に与える影響、色を使った心理テストや芸術療法、色の歴史と各色のイメージ、衣食住など日常の中の色、色を感じるしくみまで、色彩と心理の関わりについて文章と図版でわかりやすく解説しています。
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