長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-11月号」 夢へのいざない〜秋の夜長に

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面接室からのたより

コラム「LOUNGE-11月号」 ―夢へのいざない〜秋の夜長に―

(2011年11月4日掲載)
 夢見は私たちにとって日常的に経験するものであり、睡眠中に心に生じたとわかる一つの生活体験です。高い確率で、目覚める直前に夢をみていたことが報告されます。一瞬にして忘れ去ることもあれば、再度思い返してその余韻に浸ることもありましょう。フロイトは夢に、願望充足や抑圧された衝動の侵入から眠りを守るという役割を想定しました。対照的にユングは、夢が覚醒時の自我の限られた見方を補償すると理解しました。
 心の構造は、氷山に譬えられます。表面に出ている目に見える氷の部分が「意識」で、その下の水面に隠れた広大な領域が「無意識」に相当します。この無意識の領域から意識の領域へ向かってメッセージを伝えようとして視覚化されたものが「夢」なのです。ユングは夢のもつ補償機能を臨床的利用において重要とします。
 第一に、夢は自我機能のさし当たっての歪みを補正し、自分自身の態度や行動をより広い視野から理解するように導いてくれます。たとえば、友人に対して腹を立てその怒りはすぐにおさまったのに、夢ではその友人に激怒していたとすると、その友人との関係において、怒りを抑制してしまう神経症的なコンプレックスの存在が考えられます。夢に基づきさらなる連想をすることにより、その友人との関係に限らず、広く対人関係における怒りの感情の持ち方について理解を深めることができるかもしれません。
 第二の補償作用として、夢は心の自己表現として、現実に直面している課題について気付かせてくれます。このタイプの例として、地域でも家庭でも仕事の上でも、社会的に極めて良く適応していた人における、「おまえは本当の生活をしていない」と忠告する夢が挙げられます。その後この言葉の力は、夢をみた時点では明らかでなかった地平に向かって、夢み手を歩ませたのです。現在の状況に適応していることと、その人の自己実現(個性化)の過程とは次元が異なるようです。
 夢のモチーフは、現在に関連したり過去に関連したりして、生きている人、亡くなった人、および実際の人物や覚醒生活では見知らぬ人が登場します。見知らぬ人は、おそらく夢み手自身の心の人格化された部分かもしれません。注意深く夢を眺めていると、心のどの部分のコンプレックスなのか、過去のどのような経験が影響しているのかが理解されてきます。そうすると、私たちが日常生活で、行動において無意識的に反復していること、回避していることなどに直面することを可能にします。夢は、人を神経症から脱出させ、個性化の過程へと導いてくれるのです。秋の夜長、「夢解釈」の本をお好みで、一冊手にとってみられたらいかがでしょうか。
(「ユング派の夢解釈」創元社 参照)

―待合室で読める本から―

「休職中の告白」(ハート出版) 田村 浩二 著
うつ病を再発し、現在二度目の休職中の著者が、うつ病を経験した者としての視点から、症状、自殺願望、性格、治療などについて赤裸々に語っています。気分が滅入っている時でも読めるような構成です。
「職場のうつー復職のための実践ガイド」(朝日新聞出版社) AERA LIFE
うつ病における復職準備期に焦点を当て、家族や職場の対応、セルフチェックの仕方、金銭面の不安への対処法など、専門家の立場から詳細に解説しています。
「人事・総務担当者のためのメンタルヘルス読本」(労働科学研究所出版部) 鈴木 安名 著
職場にメンタルヘルス専門の産業医や保健師が配置されていない企業の人事・総務担当者にとっても、経営的視点からの理解を含め、不安なくメンタルヘルスの実務ができる内容になっています。
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