長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-2月号」 うつになりにくい心の保ち方

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面接室からのたより

コラム「LOUNGE-2月号」 ―うつになりにくい心の保ち方―

(2012年2月6日掲載)
先日の五輪選考女子マラソンでは、期待されて調子も良いとされていた福士選手が脱落し、無名の選手が初優勝しました。マラソンは人生に譬えられますが、マスコミや周囲の期待に応えようとして頑張りすぎた結果、途中息切れしてしまうより、最後までマイペースで走りきったほうが勝ちにつながったようです。私は面接の中で、自分のペースで生活や仕事ができているだろうか、適度な休養がとれており自分の楽しみを持てているだろうかなどということを問いかけます。初診の段階では、「自分だけが何故こんなにつらい思いをしなければならないのか」と内向きの閉ざされた思考が優先であった方が、「まあいいか」と思えるようになったと笑って話されます。こころの中に「考えられる」スペースができたということでもあります。
ところで、大学時代同期で陸上部に所属していた、スポーツ医学を専攻している整形外科医がいます。当時から中・長距離で突出した成績を上げていましたが、長年各地のマラソン大会に出場しています。彼は50歳を超えていますが、いまだに現役として同年代としてはかなりの好記録でフルマラソンを走り続けています。途中故障を経験しながらも、30数年にわたり続けてこられたのも、決して無理をせず楽しみとしてやってきたからだと言います。毎年の年賀状には笑顔でゴールを切っている写真が添えてあります。元々あまり周囲の意見を気にせずに生きていく術を身につけている人ではありますが、心の健康を保ちながら目標を達成するには、マイペースを保つことが必要なのかもしれません。
心の健康でもう一つ肝要なのが、正面から一枚岩でぶつかる真面目さは、物事がうまく廻っているときは周囲に評価され、自己満足も得られるのですが、そうでない状況になると意外に脆い面を持ち合わせていることです。うつや不安障害、適応障害になりやすい人の多くは真面目すぎて苦しくなる人なのです。ちなみに、私たちは様々な場面で、色々な自分を使い分けて生きています。たとえば、主婦であり妻であり母親である女性は相手によって態度や言葉遣いも異なってくるでしょうし、多面的な自分を使い分けているのです。この使い分けという点では、表と裏、舞台と楽屋という考え方があります。仕事が表舞台で家が楽屋なら、くつろぐ“素の自分”を出せる場所が確保されています。心の不健康さが表面化するのは、家でも職場でも楽屋がなくなることで、これは多くの場合「居場所がない」と表現されます。その場合、とりあえずの居場所を診察室やカウンセリング室において、そこから自分の環境を見つめなおすことで、居場所を再度確保していく方策を探ります。周囲に合わせすぎても自分を見失いますし、マイペースすぎても孤立してしまいます。自分をよい意味で分裂させて他者と関わりながら、中心にある自分は一貫性を維持したマイペースさを保つようにするとよいのでしょう。

―待合室で読める本から―

「女性のうつ病の治し方」(リヨン社) 税所 弘 著
うつ病は、まじめな人、気のいい人、正直な人、仕事ができる人ほどかかりやすいと著者は言います。その症状へのとらわれをなくす事の大切さを説き、うつ病対策の12の実践方法を紹介しています。
「うつの世界にさよならする100冊の本」(ソフトバンククリエイティブ) 寺田 真理子 著
読書でうつを克服した著者が回復に役立った100冊を紹介しています。自分の孤独を癒してくれた本は、一生にわたる座右の書となるかもしれません。
「イグアナの嫁」(幻冬舎文庫) 細川 貂々 著
無職・貧乏・うつに立ち向かい、マイナス思考を克服する、夫婦とイグアナの感動的なマンガ。「ツレがうつになりまして」の第2弾です。
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