長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-10月号」大人のADHDとは

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コラム「LOUNGE-10月号」―大人のADHDとは―

(2012年10月05日掲載)
 最近、職場において物忘れの多さや注意力不足が指摘され、業務をめぐり上司とのコミュニケーションがうまくいかないことで受診される方が目立ち始めました。これまでは、過重労働やパワーハラスメントなどから職場適応に問題が生じ、二次的にうつ状態や不安状態を呈して来院される方がほとんどでした。このような仕事や家事の段取りが悪く、空気が読めないなどの原因として、その方の生来の発達のアンバランスが関係していることが多いようです。本人自身の悩みでもありますが、職場の同僚や上司、家族が気づき、受診を勧められることもあります。
 では、ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)とはどのようなものなのでしょうか。日本語では注意欠如・多動性障害といいます。不注意や多動性、衝動性を特徴とする発達障害で、生活に様々な困難をきたします。大人になると多動性は弱まり、不注意や衝動性が目立つ傾向にあります。たとえば、会議中にそわそわしてしまう、貧乏ゆすりをやめられない、思ったことをすぐに言動に移してしまう、仕事に集中して最後までやりきれない、締め切りに間に合わないなどのことが日常的に生じ、指摘を受けても改善されがたいので、周囲とのコミュニケーションに障害をきたします。
 これらの症状の主な原因としてあげられるのが、脳の構造や機能の問題です。脳内には、無数の神経細胞がはりめぐらされており、その橋渡しをして情報を伝えているのが神経伝達物質です。そのうち、ドーパミンとノルアドレナリンは行動や感情に関わる神経細胞の働きを調整してくれます。メチルフェニデートとアトモキセチンは、ADHDにおいて低下しているドーパミンとノルアドレナリンの濃度を上昇させ、注意・集中力を改善させます。投薬により情緒的に安定し集中力が高まることで、仕事上のミスが減り子供への暴力もふるわなくなります。次第に自信がつき仕事や家庭生活でも余裕が出てくることで、薬物に頼らない生活も可能になります。
 ちなみに、職場や家庭でのコミュニケーションの問題が長期化し悪循環に陥ると、自己否定的な感情が優先するようになり、うつ病や不安障害を合併します。まずは、自分の生活の中での困難を理解し、対処方法を身につけていくことです。それには、周囲の良き理解者やサポーターが必要になります。同時に、自分を客観的にみていける「観察自我」を治療者と共に育てていくことが肝要です。そうすると、衝動や感情を自分のものとしてコントロールする術が身につき、これまで「できないと感じていた自分」が「できる自分」へと変化するのです。

―待合室で読める本から―

「それって、大人のADHDかもしれません」(アスコム) 星野 仁彦著
自らもADHDであるとする精神科医の著者が、大人になっても周囲の協力と理解を得ながら病気として受け入れる術と自信を再び獲得する生き方について述べています。
「どうして私、片づけられないの?」(大和出版) 櫻井 公子著
ADHDを“脳の働き方のクセ”として理解することで、問題を前向きにとらえ対処可能であるとし、一人ひとりの個性を大事にして物事を決めつけないことの大切さについても語られています。
「Adult ADD: The Complete Handbook」(Three Rivers Press) David B. Sudderth M.D.著
神経内科医である著者が臨床経験に基づく具体的な事例を豊富に挙げながら、治療法の紹介や診断の過程を説明しています。ADD原因と診断、薬物治療と自ら行える日常的な実践などについて詳細に解説しています。
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