長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-2月号」シネマとこころの世界

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コラム「LOUNGE-2月号」シネマとこころの世界

(2013年02月08日掲載)
 こころの世界を知るには様々な方法がありますが、その一つとして映画は最上のものを提供してくれます。学生時代に見ました「カッコーの巣の上で」は精神障害者の理解や脱施設化という視点のみならず、こころの自由について考えさせられました。ロボトミーという手法も過去に日本で実際に行われていた治療法ですし、施設を抜け出せばうまくいくのかというと、生活難民となってしまうことも現実なのです。今なお社会福祉の充実は必須でしょう。
 妄想の世界を描いた「ビューティフルマインド」は、統合失調症を患ったとしても一生を精神病院で過ごす必要のないことを教えてくれます。大きな使命を与えられたナッシュはそれが非現実の世界であることに気づいていくのですが、そこには妻や周囲の人の支えがありました。こころ暖まる内容であることに加え、たとえ幻覚や妄想が消失しなくても現実と非現実の双方を受け入れながら適応が可能であることを教えてくれます。
 精神科医になって間もない頃、話題になった映画が「ナッツ」でした。ちょうど境界型人格障害が診療において話題になった時期でもあり、勉強も兼ねて見ましたが、その衝動性の持つ迫力は今でも記憶に残っています。その人の一部に潜む狂気(ナッツ)から、一時的な妄想状態をきたすのですが、日常的には正常と変わりないのです。同時期の「羊たちの沈黙」も偏った人格のあり方について理解を深めてくれるものでした。
 最近話題になっています発達障害の自閉やアスペルガーという概念を理解することにおいて「レインマン」は興味深い映画です。ダスティン・ホフマンの演技がすばらしかったし、一人遊びが多く孤立しやすい障害であるため、一見共感しがたい事柄にも新たな視点が加味され、見るに値するものでした。臨床の現場では軽症の発達障害の方が多く、社会的に見逃されていることで、結果として抑うつや不安を伴って来院される方が増えています。
 ちなみに、精神療法の症例検討会などでも、映画を見て連想を言い合う形のセッションが行われます。過去の名作を含め、これから上映予定の映画に関心を持つことは、趣味の一環としてだけでなく、こころの世界を深めていく手助けとなるでしょう。長崎大学精神神経科小澤教授による学生を対象としたシネサイキアトリーの講義がありますので、興味のある方はそちらのサイトもご覧ください。

―待合室で読める本から―

「精神科医がすすめる“こころ”に効く映画」(日経ビジネス文庫) 高橋祥友 著
著者は趣味で映画を見るだけでなく、メンタルヘルスを保つ一つの方法としてテーマ別に代表的な映画を取り上げ解説しています。こころの専門家による視点が興味深いです。
「映画にみる心の世界」(金芳堂) 中村道彦 著
精神医学的な側面に臨床心理学的視点を加味し、病態ごとに理解を深めやすい映画について触れ、さらに疾患についてのわかりやすい図説が掲載されています。
「職場のうつに対する薬物療法」(星和書店) 臨床精神薬理VOL16 2013
休職中の薬物治療と生活指導、現代型うつ病の特徴、リワークおよび復職直後の治療戦略など最新の知見が特集として組まれています。
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