長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-8月号」「うつ」−周囲の人々にできること−

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コラム「LOUNGE-8月号」「うつ」−周囲の人々にできること−

(2014年08月04日掲載)
心のケアにおいて、患者さん本人に対する治療は大切なことですが、周囲の人々の対応の仕方によって、本人の症状が良くも悪くもなってしまう側面があります。それには病気を正しく理解し、その経過のなかで、患者さんが今どの辺りの段階にあるのかを知っておくことです。回復のプロセスを理解しておけば、一進一退が続く心の病の変化にも、慌てることなく適切な対処をとることができます。
周囲からみたうつ病を疑うサインとして、表情が暗く元気がない、身体の痛みや倦怠感など身体的不調の訴えが増える、会話が減り外出しなくなる、飲酒量が増えてイライラした様子が続くなどの項目があります。このような状態に対し、本人は心の働きが鈍っているので、客観的な判断ができにくいようです。うつになりやすい人は周囲に弱音を吐かず、性格的な弱さと捉えていることもあります。はじめは身近な人が付き添って、クリニックへ行くのが良いでしょう。
うつの急性期は、何事につけても物事を悪い方に捉えがちです。この時期の否定的な捉え方は、患者さん本来の思考ではなく、うつ病により脳が正しい判断ができず負のスパイラルに入っている状態ですから、本人の気持ちを尊重して話を良く聞く態度が必要です。具体的な事柄について、ともに力を合わせるという周囲の人の気持ちが本人の負担を軽減します。主治医との面接だけではわかりにくい、生活上の変化に気づくことができるのも家族の役割です。
まずは、安心してゆっくり休める環境が必要ですので、場合によっては入院を考慮することが望ましいこともあります。まさに見通しのないトンネルの中にいて“お先真っ暗”という感覚もありますから、必ず改善する病であることを理解し、そのことを伝えていくことです。この時期に、退職など人生の重大事に関する決定はしないことが肝要です。服薬については十分な説明を受け、効果がすぐにあらわれない薬もありますから、焦ることなく確実な服薬を心がけ、気になることがあれば早めに主治医に相談することです。
回復期になると症状は安定してきますが、日によって気分や体調に揺れがありますので、無理は禁物です。朝は、太陽の日を浴び、近所への散歩をするなど活動範囲を広げていきます。この時期は復職への焦りや回復を急ぎすぎるため勝手に服薬を中断するなどが出てきますので、家族は本人の実行可能なことはサポートし、行き過ぎに関してはブレーキをかけることも必要になってきます。実際に復職の時期が近づくと急に不安が増し、自信をなくすことも考えられますので、無理をさせることのないように気を配りましょう。何より常に傍らにいて、どのような話であっても耳を傾けていくことが家族には求められることだと思われます。
(参考図書:「かくれ躁うつ病が増えている」 岩橋和彦他著 法研)

―待合室で読める本から―

「最初の質問」(講談社) 長田 弘著
詩人長田弘氏の代表作のひとつであり、中学3年生の国語の教科書にも掲載されている「最初の質問」を、画家・絵本作家のいせひでこ氏が、「絵本」として構成します。詩の言葉を表面的に捉えて絵をつけるのではなく、いせ氏が自分の中で一度消化し、新たな作品として表現した力作です。
「大丈夫、みんな悩んでうまくいく。てんてんの“十牛図”入門」(朝日新聞出版) 細川 貂々著
「ツレがうつになりまして」で人気の貂々さんが、ずっと迷い続けて生きてきて、自分のことが嫌いで、悪いことばかり考えて、しょっちゅう体調を崩していたところ、禅の教えのひとつである「十牛図」から、自分に自信をつけ、気づくと迷わなくなっていた半生を描くコミックエッセイ。
「気力をうばう“体の痛み”がスーッと消える本」(アスコム) 富永 喜代著
体の痛みは機能的な障害だけが原因というわけではなく、個人個人の事情によってさまざまです。「痛み」を消す「クスリ」とのつき合い方、痛みを消したければ怒るのをやめたほうがよいこと、“しつこい痛み”をスーッと消す方法などについて解説しています。
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