長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-5月号」外傷体験を理解し克服する方法

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コラム「LOUNGE-5月号」外傷体験を理解し克服する方法

(2016年05月06日掲載)
突然の病気、事故、暴力あるいは自然災害−これらの出来事すべてが外傷的経験(トラウマ)に当てはまり、混乱や苦痛が生じる場合があります。このような経験は、強い影響力を持つため、感情が不安定になることがあります。たいていは時が経てば専門家の助けがなくても落ち着きます。外傷となる出来事にあった直後には、人はショックを受けたり、無感覚になったり、起こったことを受け入れられないことがよくあります。たとえば、唖然、茫然とする、あるいは感覚が麻痺する、自分の感情、または周囲で起こっていることから切り離されたように感じるなどです。否認の状態にある時、人は起こったことを受け入れず、何もなかったかのように行動します。周囲の人たちは、あなたがしっかりとしているとか、起こったことを気にしていないのだと思うかもしれません。
数時間あるいは数日を過ぎると、ショックや否認の感情は次第に弱まり、別の思考や感情に変わっていきます。次のような感情が生じてきます。 恐怖−同じことが再び起こるのではないか、もしくは感情のコントロールを失って、取り乱すかもしれない。無力感−非常に悪いことが起こってしまい、それについて何もできなかった。怒り−起こった出来事や、それに責任がある人に対して。罪悪感−苦しんだり亡くなったりした人がいるのに、自分は生き残ってしまった。それを防ぐために自分にできることがあったかもしれない。哀しみ−特に誰かが負傷したり亡くなったりする。とりわけ自分の知っている人の場合。恥または困惑−自分ではコントロールできない強い感情。安心−危険が終わりその危険が過ぎ去ってしまったことに対して。 希望−生活が普段の状態に戻ることに対して。このように、外傷のすぐあとには、様々な感情に翻弄されます。
強い感情は体の健康に影響を及ぼします。外傷体験から数週間経つと、以下のことに気付くかもしれません。眠れない、非常に疲れている、多くの夢や悪夢を見る、集中力がない、記憶力に問題がある、考えがまとまらない、頭痛がする、食欲に変化が生じる、性欲や性的衝動に変化が生じる、体があちこち痛い、心臓の鼓動が速くなっているのを感じるなどです。起こってしまったことを受け入れ、それとともに生きることを学ぶには、数週間あるいは数カ月かかります。失ってしまったもの(人)を深く悲しむ必要があるかもしれません。起こっていたかもしれないことについて思いを巡らすよりも、起こったことの現実に直面する方がよいのです。もし葬儀や追悼式に行くことがあれば、これらの機会は起こってしまったことを受け入れるのに役立つかもしれません。同じ経験をしてきた他者と時間を過ごすことが役に立つことがあります。少しずつ、外傷体験について考え、それを誰かと話してみてください。話しながら泣いてしまうことを心配しないでください。当然なことですし、回復の助けになります。たとえあまり食べる気がしなくても、規則正しい、バランスのよい食事を取るように努めます。運動はいいことですが、徐々に始めてください。
次のような場合、かかりつけ医に助けを求めるべきでしょう。感情を分かち合ってくれる人が誰もいない。自分の感情に対処できず、哀しみ、不安または緊張感に圧倒されるように感じる。6週間経っても普段の状態に戻っていないと感じる。悪夢を見て眠れない。親しい人とうまくやっていけない。他の人達を避けることが増えている。仕事に支障がでている。助けを求めるように周囲の人から勧められる。事故を起こす。感情に対処するため、過度の飲酒、喫煙、もしくは薬物を使用している。外傷後、うつ病になることがあります。うつは通常の悲しみとは違い、身体的健康に影響し、長期間に及ぶため、より一層悪い状態です。うつ病は、抗うつ薬、あるいは、カウンセリングや心理療法のような対話療法のどちらかで治療することができます。
(「日本語版こころの健康ガイド」より抜粋)

―待合室で読める本から―

「自己愛な人たち」(講談社現代新書) 春日 武彦 著
自分を大事にできなければ、生きづらいし、他人を大事にすることもできません。反対に、自分の中で自己愛をコントロールできなければ、どこか独りよがりになってしまいます。本書では、著者自身の経験から文学作品まで、自己愛に折り合いがつけられない困った人たちのエピソードを通して、自己愛について探究していきます。
「ぼくらの中の発達障害」(ちくまプリマー新書) 青木 省三 著
人とのやり取りが苦手だったり、こだわりが強かったり、発達障害について、その原因や特徴、対処法などをよく知れば、誰のうちにもそれらがあることに気づきます。自閉症、アスペルガー症候群など、発達障害とはどんなものかについて、その原因や特徴、対処法について解説しています。
「メディアと芸術」(集英社新書) 三井 秀樹 著
デジタルメディアが芸術に対してどのような影響を与えてきたかを追跡する内容です。デジタル以前のテクノロジーアートの発生から話を始め、芸術に対して科学技術が与えた影響について時代を追ってまとめています。
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